闘病記を勉強するのに役立つ本のオススメを紹介!看護学生向けに

看護することは病態や症状の原因や治療などの知識を身につけることだけに尽きるものではありません。患者さんは日々の体調の変化ひとつを気にかけ、治療効果がでているのかなど様々な不安に囲まれて闘病の日々を過ごしています。

 

言葉にできない不安を抱えながら、検査や画像診断などの検査項目や指標では見えてこない患者さんの心のなかの今日の心の葛藤などに寄り添うこともまた看護の場面では重要です。

 

しかし実際に病気になった経験を持たなければ理解できないことのほうが多いのは揺るがない事実です。

 

看護師と患者の間には、看護するものとされるものという歴然とした違いが存在しているわけです。

 

このような関係性を前提にしつつも、患者さんの体調面も心理面もケアできる良質な看護を提供することは看護師に求められています。

 

そこで看護学生の皆さんが看護を勉強するときに役立つ視点や気付きを示唆してくれるおすすめの闘病記の本を御紹介します。

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脳腫瘍の専門医として将来を嘱望なれながらも自らも悪性の脳腫瘍に罹患した闘病記を描いている本が「医者が末期がん患者になってわかったこと」(岩田隆信著・中京出版、2007年刊)になります。

 

 

 

慶應義塾大学卒業後研究生活をおくったのち、悪性脳腫瘍の第一線で臨床治療に取り組み、日本国内でも屈指の専門医として治療の最前線に立っていた著者が、1997年1月に自らが治療対象として向き合ってきた「グリオブラストーマ」に罹患していることが判明する。

 

以後1998年12月15日に病に斃れるまでの闘病記を時にはCT写真などの客観的資料も交えつつ赤裸々に闘病の日々を描いています。

 

臨床現場で治癒のほとんど見込めない悪性脳腫瘍と判明しつつも、家族のために生き残るために積極的な治療に取り組むことを挑戦する筆者の思いが、あくまで自然科学者としての冷静で客観的な筆で文字にされているのが逆に心を打ちます。

 

腫瘍をほぼ全部摘出し放射線療法や化学療法など最もアグレッシブな治療の選択肢を追求しつつも、数ヶ月も経過する頃にはCT画像には再発を示唆する初見を自ら目にしつつも、次の治療を検討し最期まで治癒の可能性に望みをかける姿は、抑制的な文体前編が貫かれているだけに凄惨なまでの決意を窺い知ることができます。

 

どれほど臨床医学の診断や治療技術が発展しても、必ずどこかで人間は限界を迎えることになります。

 

それは効果的名治療方法が発見されていないためかもしれませんし、あるいは老衰を寿命を迎える場合かもしれません。

 

誰にとっても病気にかかることや、時にはその先に「死」の結末が見えている場合でもその時々の状況でベストのケアを提供し、不安や恐怖を取り除くことは看護師がいつでも担うべき重要な役割です。

 

医師や看護師などの医療を提供する側の視点だけで大切なものを見落としてしまう場合もあるのです。

 

治療や看護の対象と認識して冷静に職務を遂行することは前提と言えますが、患者の目線を忘れないためにも医療従事者が患者の両方の目線で描かれたこの闘病記はすべての看護学生の皆さんにお勧めできる作品です。